人生崖っぷち(物理)

森林鉄道、廃道、廃隧道など

森町の明治未成隧道探索 其の壱

昔々とまではいかないが2012年1月、ネットを検索していると1つの文章を見つけた。それは静岡県周智郡森町の明治時代の様子を紹介した「森町変遷雑記」という本の1節で、向天方という場所について言及していた。その部分の原文を抜粋してみよう。

 

・・・道巾広からぬも、古くより原の谷方面の要路にして又村の幹道たり。道は東して原田村、西の谷に道ず。明治廿年頃墜道を穿ち、榛原郡金谷へ開通すべく、鈴木才吉氏多くの土工と「トンネル」開鑿に着手せるも中止す。原の谷行路はトノ谷沢を越え大高山山脈の中腹を越ゆる難路なり。

 

これはつまり、明治時代の未成隧道の話だった。次に思ったことは”何か残っていないだろうか?”である。明治廿年(20年)即ち1877年といえば2012年度から125年も前だ。しかも未成である。痕跡が残っている可能性は低いだろう。だがそれは現地へ行ってみないと分からない。もしかしてもしかすると”何か”が残っているかもしれない。ならば次は場所の特定だ。地理院の地図を見ると向天方の地名が載っており、そこから川沿いに道が東に延びている。川は南北に延びる峰に沿って北に向きを変えるが、1本の破線道がそのまま東に向かい鞍部を越え、西の谷川に通じている。細かい固有名詞の場所は分からなかったが、沢を越え山脈の中腹を越ゆる難路という言い回しからここではないかと推測した。そして念のために森町の町立図書館に足を運んでみたがこちらは空振りに終わってしまった。ただ新しい発見はなかったものの、森町変遷雑記の原本を見つけることが出来た。あとは自分の目で確かめるだけだ。1月下旬のよく晴れた日に探索を実行した。

 

                森町の明治未成隧道探索 其の弐へ続く