歩き始めた場所へと戻ってきた。今度は下流へと進む。
大きく開いた切通しを曲がる。
所々石垣で保護されており路盤はしっかりしている。
しばらく進むと右に折れ曲がって大きめの谷へと入っていく。
しかし少し進むと道は切り立った崖になって消えていた。
崖っぷちから谷の対岸をよく見てみると
道の続きがある。多分木橋で渡っていたと思われる。
記憶に残っていないのだが、なんとか谷底に降りた。撮った写真1枚じゃどうやって昇り降りしたのか分からないが。
対岸に渡ってさっきまで居た場所を眺める。実は後年、ここを降りられずに退散したことがある。体力、技術、観察力、運、テンション。道を歩くにはこれらが必要だ。
難所である谷を突破し意気揚々と更に前進する。
その2分後に撮った写真である(笑)。遥か頭上の林道まで視界が開けている。
跡形もない路盤。水平に道があると仮定し、ぶれないようにガレ場を突破する。
石垣がわずかに残っている。そのおかげでここが道だったことを確信できる。
前方が白い。川沿いの廃道、廃線歩きで見たくない景色ベスト3に入るやつだ。
まあ、そこそこの急斜面だったがここは簡単に横断出来た。
話は変わるが灌木は邪魔になることもあれば、手がかりや足場になることもある。敵にも味方にもなるのだ。
やっかいなのは、崩れた斜面がえぐれて段差ができてしまうこと。このように。
なんとかよじ登ると久しぶりに崩れていない路盤との対面だ。
普通に歩けるちゃんとした(?)道が残っているとホッとする。
埋もれつつも道を保持してくれる石垣は縁の下の力持ちだ。
・・・そしてこの日1番のえぐい場面がきた。斜面から顔を出した岩は土と違い、踏みしめて平らに均すことが出来ないし、下手に踏んだら滑るので一番嫌いな斜面だ。
しかも道の跡がどんどん崖っぷちによっていく!こういう場面では安全をとって撤退することが多いのだが、なぜかこの時は前進を選択した。つまり、いけると思ったのだ。
岩壁を削って造られたわずかな平場を慎重に進む。ここ怖かった。怖かった。
振り返って。
わずかな足場のみを頼りの移動は心臓に悪い。上も下も逃げることが出来なければ尚更だ。
路盤は復活しないが掴まることが出来る木が増えた。おかげで安心感がちがう。でも道の跡というには崩落がひどくて険しすぎるが。
あ!?
ほんの一組の木材の組み合わせだが間違いない。桟道(崖や斜面に棚のように張り出して造られた道)の一部だ。自分にとってはお宝発見である。よく残っていてくれたものだ。そしてここや先ほどの斜面は崩れていたわけではなく、桟道で越えていたのだろう。
この上を木馬(きんま)やトロッコが走っていたとしたらわくわくしませんか?
この後更に進むのだが、桟道の跡はこれ以外に見つかることは無かった.
しばらく進んだ後、前進は難しいと判断した時点で撤収を決め、適当なところで登ることにした。さっきのとこ戻るのとか怖いし。
コンニチワ!
強引に登って林道に復帰した。この後あの参道の跡をもう一度見たいと思ったが、そこまでのルートが厳しすぎて再訪は叶っていない。
池郷川の道々 7 もしくは短編予定