よく見ると足元には黒いプラ製の階段ブロックが埋め込まれており、上を通る電線からこの道が保守用の巡視路であると見当がついた。しかしブロックは半ば埋もれ、道自体も細く土砂や枯れ葉が積もる急坂は、一歩一歩慎重に足場を確かめながら降りていかなければならなかった。川側はもちろん何もなく、山側も掴めるような草木や岩はない。しゃがむのもバランスを崩しそうで怖く、安定しているのは埋もれずに済んだ狭いプラスチックブロックの上だけだった。
巡視路なのに作業員が落ちるんじゃないかと思うほどの坂道だった。ここは本当に現役なのか?そしてつづら折りの曲がり角。次の写真を見てもらうと分かるだろうが、特に怖かった。
曲がり角に近づくにつれ道が細く斜めになり、急激に落ち込んでいる。そして側面だけ露出した階段ブロックは上からは全然見えなかった。もし、足を滑らせて勢いがついたら下の河原に五体投地する羽目になりそうだった。
2つ目の曲がり角も慎重に降りる。
2つ目の曲がり角を下から見たところ。無理やり方向転換してるからこんなことになってるのか。
それにしてもここに雪が残ってたら流石に降りれなかった。
ようやく下に水平道が見えてきた。実を言うと坂の途中ぐらいから少々思考がおかしくなっていた。”危ないから引き返す”という考えよりも、”怖いので早く下の平らな道に降りたい”という思いが頭の中を占めていた。それだけこの時は恐怖を感じていたということだ。
降りてきた道を振り返る。あくまで目標は下から確認出来なかった旧道部分だが、途中でこんなにスリリングな思いをするとは思わなかった。
近づいて気付いたが、電柱はまさかの木製だった。
いったい何時のものなのか?
ようやく古道の水平部分に到着した。
現在地はここ。
そして視線の先、降りてきた坂より北にも道が延びている。やはり、旧道はあったのだ。
降りる前に上から見えた南へ延びる道。興味はわくが残雪が多そうなので今回はパス。(実際はそんな甘いものではなかった)
さて、旧道とのご対面だ。
感想を言うなら”すごい”の一言。ここに道を造ろうと思いたったことも、実際に造ったことも。そして使われたであろうことも。
あと感想はともかく結論から言うと踏破どころか足を踏み入れるのもやめた。
ただでさえ狭い崖道に土砂が堆積して谷側に斜めになっている。
そして山側には手で掴まるような場所はない。実際には傾斜もそれほどではなく冷静になれば進めたかもしれないが、この時は直感が無理だと言っていた。
撤収。旧道に別れを告げて坂道を登る。登るほうが難易度が低かった。
坂を登り切るとあとは安全な斜面を下っていく。
こうして短くも濃密な探索を終えた。これで満足・・・いや、雪が溶ければ・・・
割石の裏高崖4 へ続く