奈良県南部の池原貯水池に注ぎこむ谷のひとつ、岩屋谷。この上流には岩屋谷滝と呼ばれる雄滝と雌滝の2つの素晴らしい滝があるのだが、そのうちの雄滝のそばに謎の隧道が存在するらしい。ちょっと見てみたいと思ったのだが、これが少々難易度が高い。滝屋さんのレポを見ると沢登りで谷を遡行していくルートと、山の稜線の登山道を進みピンポイントで滝に降下するルートの主に2つがあるのだが、無論沢登りの経験などない。ならば登山道ルートはというと往復で10時間越えの記事がぽろぽろ出てくる。とても気軽に行けるような場所じゃないというか普通に登山だとネットを見ていると新ルートとか第3のルートという文字が目に飛び込んだ。どうやら少しだけ歩く距離が短くなるルートが開拓されているようだ。なので先人の記事と地理院地図とにらめっこして悩んだ末にそのルートを選択することにした。
2019年12月、ここは岩屋谷から1本南に位置する下北山村の前鬼川沿いの林道だ。まずはここを遡る。
途中で滝が見えてきた。
「不動七重ノ滝」林道からの眺めだが凄まじいとしか言いようがない。ここを越えて更に上流を目指す。
何本かトンネルを抜けると滝の上流へ。 前鬼ブルーというそれっぽい名前がつけられた
綺麗な色の清流が滔々と流れている。
車を停め、準備を整えて河原に降りる。この滑車は索道のものか?
分かりづらいが写真中央に前鬼川に流れ込んでいる沢がある。そこを遡るのがこのルートの第一段階だ。
の前に渡河しなければならない。残念ながら長靴では歯が立たなかったため、もう一度車へ戻ってウェーダーを装備する羽目になった。
川を渡りようやく沢へと侵入する。だが前方は巨岩が連なってとおせんぼしている。
ここで時間をとられた。大岩は正面突破は難しそうだったので(何をとち狂ったか)右側の尾根に直登しようと試みるが急斜面の前に敗退。同じく右側を高巻きしようとするが失敗。ようく観察した結果、左側の端を登って突破することが出来た。
大岩を越えるとその後は難所と言えるほどの障害はなく、小さな滝や渓谷を楽しみながら進むことができた。
3,40分ほど歩くと右手に大きな枯れ谷が姿を現す。
この谷を登り尾根に出ることが第2段階。高低差約270mを登る最大の難所だ。
実はこの時登る途中の写真をまったく撮っていない。最初は写真のような岩がごろごろしており足場や掴む場所に苦労しなかったが、登るにつれ固い土の斜面になり角度を増していった。そのため足元と疲労と残り時間を気にして写真を撮る余裕さえも一時的に無くしていた。4分の3ほど登って下を眺めたとき、ここを帰りに下らなきゃいけないのかと愕然としたことを覚えている。
途中で小休憩をしながら1時間半かけて尾根に到達した。現在11時半。最初に時間をかけすぎた。ここはまだ枝の尾根なので、まず登山道が走る大きな尾根まで行き、そこから滝の近くまで尾根を移動し、谷へ降りられるルートを探し、降りて隧道の場所を探す。隧道が見つかれば、来たルートを戻って入口の渡河地点まで日没までには戻りたい。この時点で撤退に移行するタイムリミットを計算しながらの前進が始まった。
岩屋谷滝の隧道 後編 へ続く