天気は快晴だが日没までには確実に下山しなければならない。以前、暗闇の中を下山することになってから特に気を付けるようになった。怖いから。
枝の尾根から主尾根に入り現在12:54。岩屋谷の雄滝の上まで到達した。ここから斜面を下って隧道の探索、そして帰還。余裕はないがここにもう一度立つのも簡単ではない。決断する。
降下開始。・・・谷底までは高低差100mといったところか。
10分ほどで谷底が見えてきた。そんなに急斜面ではなかったので割と楽に降りることが出来たが、目標はいずこに?
到着。降りたところは河原に造ったアユのつかみ取りの池みたいになっていた。写真は上流方向だが隧道は見えない。
下流方向に少し歩くと何やら怪しげな窪みが数カ所見えてきた。これは・・・
あった!これが岩屋谷滝の隧道だ。 水面から3~4m上の斜面にぽっかりと坑口が開いている。川の流れとは垂直方向に掘られているようだが、そこにつながる道などは見当たらない。
滝の落ち口の方を見る。時間がなくて近寄れなかったのが残念だ。まあ滝は上から見てもつまらないが。
入口に立つ。ややいびつだが四角形の形をしている。
中に入って振り返る。対岸にも道や人工物の痕跡は見当たらなかった。
反対側の出口に来たがこちらも道は無い。それどころか何もない。崖の中腹に坑口が開いているようだ。
下の方はどうなっているのだろうと覗こうとしたが怖くてあまり近寄れない。
木々のせいで12月なのに周囲がよく見えない。やはり下から覗かないとこちらがどういった状態なのかがわからない。
腕を目いっぱい伸ばして横を撮ってみると垂直の岩壁が見えた。ほんとに岩壁の真ん中に穴が開いているようだ。
さて、この隧道。両出入り口の立地からまずは通行目的のものではない。坑口が崖の中腹と川沿いの斜面からして明らかだ。ならば何のために掘られたのか?やはり木材の運搬のためだと推測される。考えられるのは木流しで雄滝を回避するためのバイパスルートとしてのもので、坑口のところに堰を造って流れてきた木を留め、隧道を通って崖下へ落としていた。しかし、雄滝の横の方だから高さは多少ましだと思うが、落とした後は流すにしてもまだ雌滝とかもあるし何とも言えない。もう一つ思いついたのは索道用としてだが、隧道の大きさや穴を掘らなくても普通に上のほうを通せそう(6.7枚目の写真参照)なのでこちらも微妙だ。ただでさえ人里離れた山奥なので近所で聞き込みとはいかないし、言及している書物もあるとは思えない。真相解明は難しそうだ。
さて、現在13:17。撤収に移る。(実際10分ちょっとしか居なかったわけだが、この時はそんなこと気にしている余裕はなかった)息を切らしながら稜線まで登り、来た尾根を戻って枯れ谷の上までたどり着く。が、そこで魔が差してしまった。
急斜面の枯れ谷を降りるのが嫌で少し離れた斜面を降りることにしたのだ。
結論から言うとなんとか降りることができた。上の写真は降り立った下の沢から見上げたもの。・・・やばかった。現在時刻16:00。
16:45。なんとか暗くなる前に前鬼川にたどり着くことができた。序盤で時間を取られなければもう少し余裕を持てただろう。
林道に上がり車で一息ついたらすぐに真っ暗になった。Twitterでは二度と行かないとつぶやいたが崖側の坑口をやはり見てみたい。また行こう。
岩屋谷滝の隧道 後編 完